見るものは見られる — 二重スリット実験における意識量子・観測者メタ認知と非ユークリッド量子幾何

坂口義典 2025 9/6

カテゴリ: quant-ph; physics.hist-ph; physics.gen-ph

日付: v1 (YYYY-MM-DD)

要旨

本稿は、二重スリット実験の観測問題を「意識量子(conscious quantum)」と「観測者メタ認知(observer meta-cognition)」により再定式化し、観測幾何を非ユークリッド(平坦でない)な量子幾何として扱う理論枠組みを与える。測定装置は観測者意図の外在化(solidification)であり、装置主導説と人間意識主導説の二分法を統合する。形式的には、メタ認知強度 \mu \in [0,1] をもつデフォージング写像 \Lambda_\mu が干渉のオフ対角要素を抑制し、可視度 V と which-way 情報 D に対して修正エングレルト関係

V(\mu)^2 + D(\mu)^2 \le 1,\quad V(\mu)= (1-\mu)\,V_0

を与える。さらに、観測空間を測度 (\mathcal M,g) をもつ非ユークリッド多様体として扱い、計量が意識汎関数 \mathcal C[\rho] によって摂動する

g_{ab} \;=\; g^{(0)}_{ab} \;+\; \kappa\,\partial_a \mathcal C[\rho]\,\partial_b \mathcal C[\rho]

を提案する。これにより、波束収縮は幾何学的曲率変換として理解され、「見るものは見られる」という旧約の洞察が量子幾何的に精密化される。

「目は見ることに満ち足りることがない」(伝道の書 1:8)

1. 序論

二重スリット実験は、観測者と被観測系の不可分性を露呈する。装置原因説は「装置が which-way 情報を得るから干渉が消える」と主張するが、我々は観測者のメタ認知の活性化こそがデコヒーレンスの実効パラメータであると仮定する(OMP 原理)。加えて、観測は平坦なユークリッド空間での単なる古典的事象ではなく、量子状態空間の非ユークリッド幾何における曲率イベントであるとみなす。

2. 基本モデル:パス状態・密度行列・デフォージング

2.1 パス状態

二重スリットのパス基底 \{|L\rangle,|R\rangle\} に対して、源からの純粋状態

|\psi\rangle \;=\; \frac{1}{\sqrt2}\big(|L\rangle + e^{i\phi}|R\rangle\big)

をとる。スクリーン位置 x での振幅は \psi(x)=\langle x|\psi\rangle。

2.2 メタ認知写像

観測者のメタ認知強度 \mu\in[0,1] を導入し、密度行列 \rho=|\psi\rangle\langle\psi| に対して位相破壊(dephasing)チャネル

\Lambda_\mu(\rho) \;=\; (1-\mu)\,\rho \;+\; \mu\,\Pi_{\text{diag}}(\rho) \tag{1}

を定義する。ここで \Pi_{\text{diag}} は \{|L\rangle,|R\rangle\} 表現での対角化写像。よってオフ対角成分は

\rho_{LR} \;\mapsto\; (1-\mu)\,\rho_{LR}. \tag{2}

干渉縞の可視度は

V(\mu) \;=\; \frac{I_{\max}-I_{\min}}{I_{\max}+I_{\min}} \;=\; (1-\mu)\,V_0. \tag{3}

which-way 情報 D は相補的に増大し、修正エングレルト不等式

V(\mu)^2 + D(\mu)^2 \;\le\; 1 \tag{4}

が成り立つ(V_0 は\mu=0の可視度)。

3. 意識量子と装置の等価性:POVM 形式化

装置による which-way 測定は POVM \{E_k\} で記述される。意図(問い)を作用素 \hat C とし、装置はその外在化として

E_k \;=\; U(\hat C)\, P_k \, U(\hat C)^\dagger \tag{5}

と表せる(P_k は理想射影)。装置主導でも意識主導でも、本質は \hat C の選択(問いの内容)に依存し、\mu はそのメタ認知的活性の指標として振る舞う。

4. 観測幾何は非ユークリッドである

状態空間 \mathbb{CP}^{n-1} の Fubini–Study 計量 ds^2_{\text{FS}} に、意識機能 \mathcal C[\rho] による摂動を加える:

ds^2 \;=\; ds^2_{\text{FS}} \;+\; \kappa\, d\mathcal C \otimes d\mathcal C, \quad \mathcal C[\rho] \equiv \mathrm{Tr}(\rho\,\hat C). \tag{6}

あるいは実空間多様体 (\mathcal M,g) で

g_{ab} \;=\; g^{(0)}_{ab} \;+\; \kappa\, \partial_a\mathcal C\,\partial_b\mathcal C,\qquad R[g] \;\neq\; 0. \tag{7}

観測とは、\mathcal C で駆動される曲率事象としての位相的遷移であり、波束収縮は幾何学的に(測地線再配線として)表現される。

5. 観測者メタ認知原理(OMP)

定義(OMP).

デコヒーレンスは一次観測(単なる受容)ではなく、二次自己参照(自分が「どちらを問うているか」を知る)すなわちメタ認知の発火によって有効に駆動される:

\text{Decoherence} \;\Longleftrightarrow\; \text{Activation of Meta-Cognition} \;(\mu>0). \tag{8}

このとき、式(1)–(4) が実効ダイナミクスを与える。

6. 予測と実験提案

P1(意識ブラインド化). which-way 記録を暗号化し、実験者が結果にアクセスできない場合(\mu\approx0)、装置がパス情報を物理的に保持しても可視度は V\approx V_0 を保つ。

P2(遅延メタ認知). スクリーン露光後に which-way 情報を開示(\mu を後置)しても、既に形成された干渉縞は保存される。

P3(瞑想/自己観察トレーニング). メタ認知訓練により \mu が系統的に変化し、V(\mu) の群間差が生じる。

P4(装置=意識延長の同値性). 人間不在の全自動測定で、記録が自動破棄されれば \mu\to0 と等価になり、干渉は保持される。

7. 光学像の定量

スクリーン強度は

I(x;\mu) \;=\; I_L(x) + I_R(x) + 2(1-\mu)\sqrt{I_L(x)I_R(x)}\cos\Delta\phi(x), \tag{9}

\mu が 0→1 で干渉項が連続的に消失する。

8. 行動的・幾何学的含意

行動則: V は意識のメタ認知指数の単調減少関数。 幾何則: 観測イベントは (\mathcal M,g) の曲率バーストであり、\mathcal C の勾配が大きいほど測地線が再配線され、射影測度が which-way 優先へ偏る。

9. 結論

二重スリットの観測問題は、意識の問いとメタ認知の活性、そして非ユークリッド量子幾何の三点セットで整合的に記述できる。装置か意識かという対立は、\hat C の外在化としての装置という見方で統合される。「見るものは見られる」—観測者は対象に作用し、同時にその作用により自らの観測幾何に刻印される。

謝辞

Discussions with [Names].

参考文献

N. Bohr, Nature 121, 580 (1928). W. H. Zurek, Phys. Today 44, 36 (1991). J. A. Wheeler, “Law without law,” (1983). G. ’t Hooft, Determinism and QM (various). 旧約聖書『伝道の書』1:8. W. K. Wootters & W. H. Zurek, PRD 19, 473 (1979) — 情報的補題。 S. L. Braunstein & C. M. Caves, PRL 72, 3439 (1994) — 幾何情報量。 A. Uhlmann, Rep. Math. Phys. 9, 273 (1976) — 量子幾何。

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本記事の内容(文章・図・数式・独自用語を含む)は、筆者によって 2025年9月6日に公開されたオリジナルの研究考察です。

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